自己破産すると結婚出来なくなる噂って本当?結婚破談や反対されないために知っておきたい本当のところ
「自己破産すると、結婚できない」
こんなどこから聞いてきたの??と聞き返してしまいたくなるような都市伝説って、かなり多く見られます。
実際、自己破産をしても、結婚もできますし、結婚相手に迷惑をかける事もなければ、結婚前でも後でも特別不都合な事が起きるわけでもありません。
また、「自己破産すると人生の終わり・・」なんて思われている方もいらっしゃいますが、実は自己破産は終わりでもなければ、人生をやり直すために必ず必要なターニングポイントにできます。
ここでは、自己破産と結婚にまつわる話について、誤解した情報とならないようにまとめていますので、参考にして頂ければと思います。
自己破産の情報は結婚相手にバレるもの?
まずはじめに自己破産した情報ですが、結婚相手に知られてしまうリスクですが「ほぼありえない」と思って頂いて大丈夫です。
自己破産は、たとえ家族であっても保証人でない限り、基本は何も影響を受ける事はありませんし、本人のみの問題です。
連帯保証人については、債務整理をしても保証人へ効果が及びませんので注意が必要です。詳しくは、
で書いていますので、一緒に読んで参考にして頂ければと思います。
ただし、本人だけの問題と言っても、持ち家や自家用車など、家族も共有する資産を持っている場合は、差し押さえされる事になるので、家族の生活に全く影響しないという事はあり得ません。
持ち家の場合であれば、引っ越しをしなければいけない可能性もありますし、自己破産によって大きく影響する事もあると思いますので、バレるリスクはあると思っていて良いでしょう。
また、自己破産をすると、官報と呼ばれる国の機関紙に氏名、住所、破産番号(申立時、免責時)が掲載されます。
官報は、裁判所内にある官報販売所やオンライン販売されていますが、ネット上では過去30日分については無料で公開されています。
官報の役目
官報は、国立印刷局が「国民と政府を繋ぐ役目」として発行されているもので、法令や政府情報など国政上で重要な情報を掲載する事になっています。
省令、告示、国会事項、人事異動、叙位・叙勲、皇室事項、官庁報告、公告と分かれていて、破産に関する事は公告内の裁判所の部分になります。
このような役目のある官報情報に破産者の個人情報が登録される事になりますが、想像して頂きたいのですが、過去今までに官報を見たという方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?
業務上必要という方以外、もしくは裁判所に行かれた時に読まれた事がある・・という方はいらっしゃるかもしれませんが、管理人も含めて官報をじっくり読み込んだりする方は、なかなかいらっしゃらないかと思います。
まして、破産者の情報を毎回確認している方はいませんので、タイミングよく知り合いの破産者を見つけ出す事は困難な話です。
もし、結婚相手について自己破産しているのか?を官報から調べよう・・と思うと、上記のように膨大な資料から調べることになる・・という事で現実的ではない話だという事は理解頂けると思います。
自己破産の情報は漏洩しないのか?
次の可能性についてですが、自己破産が何かの理由でバレる事はないのか?という事で考えてみると、「どこかしらの情報が漏洩するケース」があるのでは??と思いました。
自己破産した情報をどこが持っているのか?を考えた時に
- 信用情報機関
- 融資を実行した金融業者
が可能性としては挙げられます。
信用情報の情報開示について
信用情報機関にはJICC(日本信用情報機構)、CIC、KSC(全国銀行個人信用情報センター)などがあり、加盟会員からの信用情報を管理、提供が行われています。
自己破産をすると、信用情報機関にも金融業者から情報提供されますので、信用情報を開示してもらい、確認すれば自己破産をしている事は確認できます。
しかし、信用情報の開示請求は原則「本人のみ」となっていて、本人以外の者が開示請求をする場合は、本人からの委任状が必要です。
ただし、法定代理人や本人が死亡している場合の法定相続人、配偶者、二親等以内の血族については、開示請求をする事が出来ます。
よって、信用情報を開示して結婚相手が自己破産をしているかどうか?を調べる事は、本人の同意がない限りは難しいとなります。
金融業者の情報開示について
同じく、各金融業者に対して借入しているかどうかの開示請求をする方法がありますが、各金融業者でも本人以外への開示請求に応じるのは、本人が死亡している以外はなかなかハードルが高いので難しいです。
また、大手金融業者だけでなく、ヤミ金まで含めると数千、数万業者もある金融業者の中で、どこの会社を利用しているのか?を当てるのは、これも現実的な話ではありませんので、バレるリスクは相当低いです。
個人情報流出のリスクについて
そしてもう一つ考えられるのが、信用情報機関や金融業者から情報が漏洩するという可能性ですが、ここは正直なところ「信用するしかない」というところになります。
大手信販会社JCBカードでも大規模な個人情報流出案件があったように、大手であろうが、小口であろうがハッカーの手によって、またはミスによって情報が流出するケースはゼロではありません。
しかし、情報が漏洩したからと言っても、結婚相手に通知が届くわけでもありませんので、情報流出をしても相手に知られるリスクは低いとは思います。
もちろん、各金融業者や信用情報機関は情報流出のないように、万全の備えをしてはいますので、その点は安心いただければと思います。
情報を悪用する金融業者には用心
セキュリティ上の用心は万全でも、過去にもあった話ですが、元金融業者に勤めていた社員が顧客リストを盗み出して、名簿屋や闇金業者などに売りさばいていたという事件がありました。
このような社員の悪用ケースは、いくらセキュリティを万全にしていても防げる範囲にも限界がありますし、闇金業者などに顧客名簿が渡るとDMを発送してきたり、電話で連絡が入ったりしますので、被害が二重、三十と広がってしまう事もあります。
同じようなケースで、先に紹介した官報情報についても、闇金業者が名簿代わりに悪用するケースがあります。
官報には、破産者の氏名、住所が記載されていますので、闇金業者からすると労せずに手に入れる事ができる優良顧客名簿なのです。
自己破産に至る方は、理由はどうあれ「多重債務状態」だった可能性が高く、借金をする事への抵抗感は一般の方よりも低いです。
また、自己破産をした事で、多くの金融業者で新たに借金をする事が難しい状況になっていますので、ヤミ金業者からDMが届いたり、連絡が入るとお金を借りてしまう方も少なくありません。
以上のように、結婚相手にバレるリスクは、家族に与える影響の範囲次第でありえますし、官報情報を使ってヤミ金業者からのDM発送や電話連絡などを受けて不審がってバレるという事はあるかもしれません。
しかし、繰り返しになりますが、顧客情報がどこかから流出したり、官報情報を見てバレるというリスクは限りなく低いと思って良いかと思います。
自己破産すると結婚できない?手続き前後でも違いはあるの?
次に自己破産をすると結婚できない・・という都市伝説と言っても良い内容ですが、自己破産の手続き中でも、自己破産の前後でも、結婚ができないなんて事はありません。
自己破産は破産法に基づいて手続きを行いますが、破産法も含めた日本における法律の根拠となる日本国憲法の第24条に「結婚の自由」について書かれていて、当事者の意思を尊重し、その意思以外の要素で婚姻を妨げる事がないようにと定められています。
憲法は、他の法律よりも何よりも優先されますので、婚姻の自由を妨げる事はありえませんし、何より破産法にも婚姻の制限をするとは一切書かれていませんので、その点は問題ないかと思います。
ただし、結婚を決めるのは当事者の意思となりますので、結婚前に自己破産した事がバレて、相手から「借金にだらしない人」と思われたり、家族に反対されてしまい、結婚が破断してしまった・・
という事例もない事はありませんので、結婚できないというよりは結婚できなかったという事にならないようには注意したいところです。
なぜ、自己破産すると結婚できないと思われたの?
ここで疑問なのが、自己破産をすると結婚できないという話がどこで出てきたのか?というところですが、管理人の推測では「自己破産の手続き中に行われている制限を拡大解釈したのでは無いか?」と思っています。
自己破産手続き中の制限とは??
自己破産の主な流れは、同時廃止の場合は
- 自己破産の申し立て、即日面接
- 破産手続き開始の決定
- 免責審尋
- 免責許可決定
となり、少額管財事件の場合は
- 自己破産の申し立て、即日面接
- 破産手続き開始の決定
- 管財人面接
- 債権者集会
- 免責許可決定
となりますが、両方共に申し立てから免責決定を受けるまでの間は「職業を制限される」事になります。
制限される職業の一例を挙げると、
- 弁護士
- 公認会計士
- 税理士
- 司法書士
- 公安委員会委員
- 公正取引委員会委員
- 宅地建物取引業者
- 証券会社の外交員
- 商品取引所会員
- 不動産鑑定業
- 建設業
- 地質調査業
- 一般・産業・特別管理産業廃棄物処理業
- 通関業
- 鉄道事業
- 風俗営業
- 競馬の騎手
- 貸金業者
- 警備員
- 質屋
- 生命保険募集員
- 損害保険代理店
- 信用金庫等の会員、役員
- 一般労働派遣事業者
- 日本銀行の役員
- 旅行業者
などは、資格制限を受ける事になり、就職する事ができなかったり、勤務している場合は復権する約6ヶ月程度の間は職務を停止しなければなりません。
自己破産の手続きが約6ヶ月程度のため、復権する期間として6ヶ月程度と書きましたが、免責決定を受けるまでの間の期間だけの話ですし、その後転職活動で履歴書に職務歴を記入する事はあっても、自己破産の経歴を書く必要はありません。
よって、転職する場合でも、特に不利益が発生するという事もありません。
また、
- 代理人
- 後見人
- 後見監督人
- 保佐人
- 補助人
- 遺言執行者
に関しても、免責決定を受けるまではなる事ができません。
自己破産中はパスポート失効?海外旅行も禁止?
職業や役割以外のところでの制限としては、「居住地、旅行など一部の行動を制限」される事はあります。
例えば、自己破産の手続き中は二泊以上の宿泊を伴う旅行、海外旅行を行う際には、裁判所に申し立て、許可が必要ですが、パスポートが失効するような事もありませんので、ご安心ください。
また、免責許可決定のあとには、このような制限はなくなりますので、どこにでも引っ越しをする事や旅行する事も可能です。
自己破産で免責決定すると戸籍や住民票に記録?
余談になりますが、自己破産をした時に戸籍や住民票に破産情報が登録されるという誤った情報が流れている事もありますが、戸籍や住民票に破産情報が記録される事はありません。
また、住基カードやマイナンバーカードなどの個人情報を管理するデータにも、破産者情報が登録される事もありませんので安心してください。
このような一部の資格制限、行動制限、誤った情報の受け取り方によって、
「自己破産すると、結婚できない」
という情報に至ったのでは無いか?と思われますが、繰り返しになりますが、日本国憲法でも認められている婚姻の自由を根拠に、自己破産をしても結婚を妨げる事は何もありませんのでご安心ください。
自己破産手続き中は結婚式が出来ないの?
婚姻の自由は認められたところで、もう一つ気になる情報があったのですが、「自己破産手続き中は結婚式を挙げる事ができない」というものです。
特段法律で結婚式を挙げてはいけない・・と決まっているわけではなく、結婚式を挙げる費用が無いのでは?というところで噂されていると思いますが、例えば親の援助を受けたり、結婚相手の自己資金で挙式するという分には、何も影響をしません。
しかし、結婚式を挙げるタイミングで自己破産をしていて、裁判所に提出する書類の中で、直近で結婚式場へ振込した記録が残っている場合、裁判官から質問される事は想定されます。
これは、自己破産の手続きにおいて換価処分をする場合は「債権者に平等に分配する事が原則」と決まっていて、挙式のような大きなお金が動く事を見過ごす事はできない場合があります。
しかし、だからと言って挙式が認められない・・という事ではなく、あくまで裁判官の客観的な判断によって処理される事にはなります。
もし、裁判官の判断で結婚式の費用として認められない場合は、キャンセルしてその分のお金を各債権者に換価処分として渡す事も考えられます。
自由財産と認められ換価処分が不要なもの
一方、換価処分をしなくて良い、破産手続きをしても持ち続けられる財産の事を「自由財産」と呼び、
- 99万円未満の現金
- 残高が20万円以下の預貯金
- 見込額が20万円以下の生命保険解約返戻金
- 自宅の敷金
- 査定金額が20万円以下の自動車
- 電話加入権
- 見込額の8分の1相当金額が20万円以下である退職金
- 見込額の8分の1相当金額が20万円を超える退職金の8分の7
- 家財道具差押えを禁止されている動産、債権
上記が自由財産にあたりますが、原則これら以外は換価処分されます。
結婚指輪は換価処分?
結婚式以外で結婚にまつわるお金と言えば、婚約指輪、引き出物、結婚指輪の類では無いでしょうか。
マリッジリングとなれば、相場は給料の3ヶ月分・・なんて事も言われるくらい高価なものを渡される方もいらっしゃいますが、市場での価値はずいぶんと下がります。
先ほどの自由財産と認められれば、手元に残しておく事ができるのですが、99万円を超える価値を誇る指輪を持っている事は稀だと思います。
また、ペアで買ったROLEXなどブランド物の時計で換価できるようであれば、処分される可能性は高いです。
しかし、日常生活で必要とする家財道具など「差押え禁止財産」に結婚指輪や婚約指輪は含まれませんので、管財人次第で処分が決まる可能性はゼロではありません。
自己破産しても結婚後に名字を変えれば問題なし?
自己破産をして官報や信用情報に氏名や住所などの個人情報が登録される事になりますが、結婚や離婚をきっかけに自己破産当時から氏名変更し、名字が変われば別人として扱われ、自己破産した事がわからないのでは?
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、信用情報機関は常に新しい情報に金融業者からの報告で行っていますし、金融業者も審査申込時には「名寄せ照会」と言って、
- 姓名+生年月日
- 名+生年月日
- 姓名+生年月日+電話番号
- 姓名+生年月日+住所
など、様々なパターンで情報照会をしていき、名字以外でも本人と断定できる情報はないか??を調べていきますので、簡単にバレてしまいます。
そして、金融業者で調べた情報は、信用情報機関にも報告され、氏名違いの情報も関連情報として登録されますので、旧姓でも氏名変更後の名字であっても過去に自己破産をしているなど、取引情報を照会する事ができるようになります。
よって、クレジットカード審査だったり、ローンの審査に名字を変更しただけで通るという事は難しい・・と思って良いかと思います。
同じ理由で、養子縁組で氏名変更をした場合も考えられます。
実際、金融業者を騙す目的で、養子縁組を繰り返し行い、名字を変えて金融業者の審査を受けて不正な融資を受けていたという事もありました。
今では滅多な事がない限り、審査に通る事はないと思いますが、このような行為は詐欺行為と思われる可能性もありますので、罪も重くなりますし、絶対にしてはいけない行為ですので、注意しましょう。
自己破産した親がいる家族と結婚するのは大変?
ここまでは、自分もしくは結婚相手が自己破産をした場合に考えられるデメリットなどをまとめてきましたが、ここでは家族の中に自己破産者がいる場合に、結婚をすると影響があるのか?という点をまとめていきます。
まず、ここで何度もお話している通り、自己破産をしても本人以外に迷惑をかける事は原則はありません。
たとえ、自分の親が自己破産をしていても、子供に影響する事は基本はありませんが、生活する中で不便と感じる事がある可能性は、ここまでお話してきた通りあるかもしれません。
しかし、身内に自己破産者がいる中で、結婚相手を迎えるという事になった場合に、相手に嘘をついたままで結婚生活を送り続ける事は出来るの?という感情的な問題は考えられる事です。
何かのきっかけで、身内が自己破産者という事がバレる事で、相手との信頼関係を壊してしまう事があるのであれば、最初から告白しておいた方が良いのかもしれませんし、その点は結婚相手だけでなく、身内ともしっかりと話し合った上で、最適な方法を考えるのが一番かもしれません。
無理に嘘をつき続けるのは大変ですし、知らず知らずのうちにストレスを抱えるという事もありえます。
自己破産する事自体は、何も悪い事ではありませんし、公的に認められている借金整理の方法です。
自己破産すると結婚出来なくなるって噂は本当?まとめ
自己破産しても、結婚予定を取り消す必要もなけれな、結婚式を挙げる事もできないなんて事はありませんし、結婚相手に知られるリスクも限りなく低いです。
また、自己破産をする事で、資格や行動の制限を免責許可決定を得るまで受ける可能性はありますが、結婚生活を制限するような事は一切ありません。
また、自己破産前と後で結婚や養子縁組などで名字変更をしても、金融業者や信用情報機関は常に新しい情報に更新したり、調査を万全に行っていますので、審査に通る可能性は限りなく低かったり、場合によっては詐欺行為と見なされる事も考えられます。
一方、結婚出来なくなるという点では「感情的なところ」が一番大きな要因になる可能性はあります。
確かに、相手がある事なので借金返済ができず迷惑をかけるという事実はあるとしても、自己破産せずに周りに迷惑をかけるよりも、しっかり再出発のきっかけと出来るのであれば、何ら恥じる事ではないと個人的には思います。
以上、結婚と自己破産に関する情報をまとめましたが、誤解を与えるような情報も多いため、しっかりここで理解頂ければと思います。